久しぶりに、大曽根のマドゥライキッチンに行ってきた。地元では結構有名な南インド料理の店で、何度も通っている。実質、行きつけである。
最近、ほうれん草カレーを食べ比べている。きっかけは松屋の「ほうれん草とカッテージチーズのカレー」で、あの記事で「本物を食べるならインド料理屋で」と書いたからには、自分でも確かめに行くしかない。
明るい店内と、少ないおっさん
店内は明るくオシャレ。内装だけなら、イタリアンのお店と言っても差し支えないかもしれない。客層は女性同士やカップル、家族連れが多い印象だ。
カレー屋にありがちな、一人で黙々と食べるサラリーマンや、カレー好きのおっさんみたいな人はあまり見かけない。まあ、私がそのカレー好きのおっさんの一人なのだが。
お香の匂いと、祖父の家
この店に入ると、お香の匂いがする。
その匂いが、もう手放してしまった祖父の家にそっくりなのだ。
祖母を早くに亡くしていて、物心ついた頃には祖父の家にはもう仏壇があった。祖父は毎日お線香をあげていた。親の帰省についていくたびに、あの家にはいつもお線香の匂いが漂っていた。
マドゥライキッチンに入ると、その匂いを思い出す。カレー屋で懐かしい気持ちになるとは思わなかった。
お香の匂いがするカレー屋というのは、日本ではちょっと珍しいかもしれない。
今週のカレーから3種を選ぶ
この店は「今週のカレー」制で、メニューには地方名がずらりと並んでいた。マラバールのチキンカレー、マハーバリプラムの魚カレー、ハイデラバードのなすのカレー、チェッティナードのマトンカレー、アーンドラの海老カレー。

正直に言うと、地方の名前を言われてもピンとこない。まだまだ勉強が足りない。それでも、地名が付いているだけで一気に異国情緒が増す。「南インド」と一括りにされるより、ずっと想像力が掻き立てられる。
北インドやネパールの店は、どうしても一括りになりがちだ。メニューの並びもだいたい同じで、どの店に入っても似た体験になる。その点、ここには特別感がある。
選んだのはこの3つ。
- マラバールのチキンカレー(トマトとココナッツミルク)
- アーンドラ地方の海老カレー(+100円)
- ほうれん草と豆のカレー(Andhra palak pappu)
これにライス、サンバル、ラッサム、ポリヤル(野菜の炒め物)、ヨーグルト、アチャール、パパド、そしてドーナツ型の揚げ物ワダまで付いてくる。大きな青い皿に小さな器がずらりと並ぶ。南インドの定食、ミールスである。価格はホリデーミールスの休日限定のセットだったが、1980円ほど、さらに追加料金のカレーとコーヒーをつけて2200円程となった。

ほうれん草カレーなのに、サラッとしている
今回の目当ては、ほうれん草と豆のカレー(右上)だ。
インネパ屋のほうれん草カレー、いわゆるサグは、ほうれん草をペースト状にして、クリームやバターでまとめたとろっとしたカレーだ。
ところがこの店のものは、まったく違った。かなりサラッとしている。
調べてみると、「パップ」は南インドのテルグ語で豆の料理のことらしい。つまりこれは、ほうれん草の入った豆のスープなのだ。ベースが乳製品ではなく豆なので、重さがない。同じ「ほうれん草カレー」という名前でも、中身は別の料理である。
マドラスコーヒーと金属のコップ
食後にマドラスコーヒーを頼んだ。南インドの、甘くてクリーミーなコーヒーだ。金属のフィルターでじっくり落とした濃いコーヒーに、ミルクと砂糖をたっぷり加える。
ホットとアイスがあって、今回はアイスにした。
以前ホットを頼んだことがあるのだが、金属のコップで出てくるので、熱くて持てたものではなかった。なぜわざわざ金属なのか。
調べてみると、南インドのコーヒーは本来、ダバラと呼ばれる金属のコップと受け皿のセットで出てくるものらしい。熱いコーヒーをコップと受け皿の間で高いところから注ぎ移して、冷ましながら泡立てて飲むのだという。
つまり、あの受け皿は冷ますための道具だったのだ。熱くて持てなかったのは、私が飲み方を知らなかっただけである。

そう考えると、アイスコーヒーは邪道なのかもしれない。次はホットを、正しい作法で飲んでみたい。
ほうれん草カレーにも、いろいろある
インネパ屋のサグしか知らないと、ほうれん草カレーとは「緑でとろっとしたもの」だと思い込んでしまう。南インドに来ると、その思い込みがあっさり崩される。
カレーの名前は同じでも、地域が変われば別の料理になる。インドは広い。
店舗情報
JR、地下鉄名城線の大曽根駅(尾張瀬戸線の森下駅はもっと近い)の近く。訪問時点では水曜定休、木曜はランチのみの営業だった。行く前に確認してほしい。


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