Apple Watch様に監視されている話——通知より大事な本質的な使い道

ガジェット

今年3月からApple Watchを使っている。
もともとシャオミの5000円くらいのを使っており満足していなのだが、なんだか「そもそも別にいらなくない?」となり、つけなくなってしまった。 Apple Watchに乗り換えてから毎日つけているので、感想を書きたい。

そもそも通知なんて切っている

Apple Watchを買うと、まずよく言われるのが「通知がすぐ確認できて便利だよ」だ。

正直に言う。私は通知をほぼ切っている。

LINEが来ても、メールが来ても、手首を振動で叩かれたくない。そういう人間だ。そもそもよっぽど緊急でない限り、「通知」なんぞは必要ない。プライベートでも仕事でも。その方が健康的である。

じゃあApple Watchを使いこなせていないのかというと、そんなことはない。むしろ毎日かなり世話になっている。

使っているのは主にこのあたりだ。

  • 睡眠トラッキング——何時に寝て何時間眠ったか
  • 歩数・アクティビティリング——今日どれだけ動いたか
  • 心拍数——安静時や運動後の数値確認
  • 天気——腕をさっと見るだけで今日の気温がわかる
  • Suica——財布もiPhoneも出さずに改札を通る

これだけで十分すぎるくらい使えている。通知なんてなくてもいい。

「Apple Watch様に見られてる」という感覚

使い続けていて気づいたことがある。

どこか監視されているような感覚があるのだ。

お天道様が見ているという日本の古い言い回しがある。誰も見ていなくても、天が見ているから行いを正せ、という話だ。Apple Watchはそれに近い何かがある。ただしお天道様と違うのは、データという形で記録を突きつけてくる点だ。

サボった日はアクティビティリングが正直に欠ける。夜更かしした翌朝は睡眠スコアが下がっている。運動をさぼれば心拍数のグラフに変化が出る。

誰かに怒られるわけじゃない。誰かが見ているわけでもない。でも記録されているという事実だけで、なんとなく行動が変わる

これは心理学的に「ホーソン効果」と呼ばれる現象に近い。1920〜30年代にアメリカの工場で行われた実験が起源で、「照明の明るさが生産性に影響するか」を調べたところ、明るくしても暗くしても生産性が上がるという謎の結果が出た。研究者が気づいたのは、「観察されている」という意識そのものが人の行動を変えていたということだ。照明は関係なかった。

Apple Watchはまさにこれだ。別に誰かが俺の歩数を見ているわけじゃない。でもデータが積み上がっているという意識が、なんとなく「もう少し歩くか」「今日は早めに寝るか」という気持ちを引き出す。

ウェアラブルデバイスの本質的な価値は、通知よりもむしろここにあると思っている。


Appleはもともとそんなこと考えていなかった

面白いのは、Apple自身が最初からこの使い方を想定していたわけではないという点だ。

初代Apple Watchが発表されたのは2014年。そのプレゼンテーションを見ると、Appleが打ち出していたのは完全にファッション・ラグジュアリー路線だった。エルメスとのコラボモデル、18金ゴールドのエディションモデル、「手首を飾るプレミアムなガジェット」という立ち位置だ。

ところが実際にユーザーが使い始めると、毎日の歩数を気にしたり、心拍数を確認したりという使い方が主流になっていった。Appleはそのデータを見て、Series 4(2018年)あたりから心電図(ECG)機能を搭載し、一気に医療・健康デバイスとしての路線に舵を切った。

これは典型的なプロダクトがユーザーに育てられた例だと思う。

Appleが「こう使ってほしい」と設計した方向より、「こう使っている」という実態のほうが強かった。そしてその流れはスマートウォッチ市場全体に波及した。GarminやFitbitが健康特化で伸び、GoogleがFitbitを買収し、サムスンも健康センサーを強化した。

Apple Watchのユーザーたちが、結果的にスマートウォッチというカテゴリーの定義を書き換えたのだ。


まとめ

  • Apple Watchは通知を切っていても十分使える
  • 睡眠・歩数・心拍・Suicaだけで日常に深く組み込まれる
  • 「記録されている」という意識が行動を変える(ホーソン効果)
  • AppleはブランディングのつもりでWatch を出したが、ユーザーが健康デバイスに育てた
  • その結果、スマートウォッチ市場全体が健康管理にシフトした

通知が来なくても、Apple Watch様はちゃんと見ている。そして俺は今日もリングを閉じようとしてしまう。


ちなみに私が使っているのはApple Watch SE 3だ。上位モデルと比べて機能は絞られているが、ここまで書いてきた使い方——睡眠、歩数、心拍、Suica——は全部できる。むしろ「これで十分だった」というのが正直な感想である。

何より、多くのガジェット系Youtuberが勧めているApple Watchはこれである。SE3はSEシリーズのなかで高性能であり、何よりコンパクトなサイズを選べるので邪魔にならない。

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